🍃 紅茶専門家による科学的解説

紅茶の香料の真実
— 天然香料と合成香料、
本当のところ

「香料が入っているから体に悪い」——そんな誤解が広まっています。しかし科学的事実は全く異なります。 フレーバーティーの歴史、アールグレイの起源、そして香料の正しい知識を、紅茶専門家が丁寧に解説します。

スクロール
CHAPTER 01

紅茶の香料を科学する

「香料が入っているから体に悪い」——インターネット上でよく見かけるこの言葉は、科学的根拠に乏しい誤解です。 食品に使用される香料は、天然・合成を問わず、日本の食品衛生法と食品安全委員会による厳格な審査を経ています。 まず、香料とは何か、そして天然香料と合成香料の本当の違いを正確に理解しましょう。

🌿 香料(フレーバー)とは何か

食品香料とは、食品に香りや風味を付与するために使用される物質の総称です。 日本では食品衛生法に基づく食品添加物として分類され、厚生労働省が安全性を評価した上で認可しています。 紅茶に使用される香料は、茶葉そのものが持つ香気成分を補完・強調するために使われます。

食品添加物として使用される香料は、食品安全委員会による科学的評価を受け、 「一日摂取許容量(ADI)」が設定されています。実際の食品からの摂取量は、 このADIを大幅に下回ることが厚生労働省の調査で確認されています。

— 厚生労働省「食品添加物」より

天然香料の原材料 — ベルガモット、バニラ、ジャスミン、シナモンなど
▲ 天然香料の原材料:ベルガモット、バニラ、ジャスミン、シナモン、スターアニスなど
🌱

天然香料

Natural

植物・動物・微生物など自然界に存在する原料から得られる香料。 水蒸気蒸留法、溶剤抽出法、圧搾法などの物理的・化学的手法で抽出・精製されます。

  • 代表例:ベルガモットオイル、ジャスミン精油、バニラエキス、ローズオイル
  • 特徴:複数の香気成分が複雑に混合した「奥行きのある香り」
  • 注意点:原料植物によるアレルギーの可能性がある場合も
⚗️

合成香料

Synthetic

化学合成によって製造される香料。天然に存在する香気成分と同一の化学構造を持つものが多く、 「天然同一香料」と呼ばれるものも含まれます。

  • 代表例:リナロール(ラベンダー香)、リモネン(柑橘香)、バニリン(バニラ香)
  • 特徴:品質が均一で安定、クリアで持続性のある香り
  • 利点:天然原料の不足・価格変動の影響を受けにくい

📊 天然香料 vs 合成香料 — 徹底比較

比較項目🌱 天然香料⚗️ 合成香料
原料植物・動物・微生物など自然界の原料石油化学原料や天然物を化学的に変換
製造方法蒸留・抽出・圧搾などの物理化学的手法化学合成反応(エステル化・酸化など)
香りの特徴複雑で奥行きがあり、自然な揺らぎがある均一でクリア、持続性が高い
安全性食品安全委員会の評価済み(ADI設定)食品安全委員会の評価済み(ADI設定)
品質の安定性収穫年・産地により変動する高い均一性・再現性
環境負荷大量採取で植物資源に影響が出る場合も天然資源の消費を抑えられる場合も
アレルギーリスク原料植物由来の成分によるリスクあり特定の化学物質への感受性に依存
コスト原料調達・精製コストが高い傾向大量生産により比較的安価

✅ 「天然=安全、合成=危険」は科学的に誤り

「天然のものは安全で、合成のものは危険」という考え方は、毒性学の観点から正確ではありません。 天然香料にも毒性を持つ成分が含まれる場合があり、逆に多くの合成香料は天然に存在する成分と 化学的に同一の構造を持っています(天然同一香料)。

日本では、食品に使用できる香料は食品衛生法に基づき、食品安全委員会が科学的に安全性を評価し、消費者庁が認可したものに限られます。 使用量も「一日摂取許容量(ADI)」の範囲内に収まるよう管理されており、 通常の飲用の範囲で健康に悪影響を及ぼすことはありません。

🔬 紅茶への香料の付け方 — センティッドとフレーバード

🌸 センティッド・ティー(Scented Tea)

茶葉と花・果物などの天然素材を一緒に保管し、茶葉に自然に香りを吸収させる伝統的な製法。 ジャスミン茶(茉莉花茶)が代表例で、中国・宋代(960年頃)から続く歴史ある技法です。 香料は添加されず、茶葉自体が香りを取り込みます。

🧪 フレーバード・ティー(Flavored Tea)

天然または合成の香料を茶葉に噴霧・添加する現代的な製法。 1960年代以降に香料化学の発展とともにヨーロッパで普及しました。 アールグレイ(ベルガモット香料)が世界で最も有名なフレーバード・ティーです。

CHAPTER 02

フレーバーティーの歴史とアールグレイの真実

茶葉に香りを加える文化は、1,000年以上の歴史を持ちます。 中国の宮廷から英国の応接間へ、そして世界中のティーカップへ——フレーバーティーの旅を辿ります。

📅 フレーバーティー歴史年表

宋代960年頃
センティッド・ティーの誕生(中国)
中国・宋の時代、茶葉にジャスミンや蓮の花の香りを移す「花茶(ファーチャ)」の技法が宮廷で発展。これがフレーバーティーの原点です。
1610年代
ヨーロッパへの茶の伝来
オランダ東インド会社が中国茶をヨーロッパに持ち込む。当初は緑茶が主流でしたが、輸送中の品質劣化を防ぐため、発酵度の高い紅茶が好まれるようになりました。
1820年代
ベルガモット添加の記録(英国)
英国の新聞記事などに、安価な紅茶の品質改善のためにベルガモットオイルを加える手法が記録されています。これがアールグレイの技術的な起源とされます。
1830〜40年代
グレイ伯爵の逸話(後世の創作の可能性)
第2代グレイ伯爵チャールズ・グレイ(英国首相)が中国の外交官から特別なレシピを贈られたという逸話が広まる。しかし近年の研究では、この話は後世に作られた可能性が高いとされています。
1880年代
「アールグレイ」の商品名定着
英国の複数の紅茶商がベルガモット風味の紅茶を「アールグレイ」という名称で販売し始め、商品名として定着。ジャクソンズ・オブ・ピカデリーなどが有名です。
1960年代〜
現代的フレーバード・ティーの普及
香料化学の発展により、天然・合成香料を茶葉に噴霧する技術が確立。ヨーロッパを中心に多様なフレーバーティーが生産・販売されるようになりました。
現代
世界的なフレーバーティーブームへ
フルーツ系、フローラル系、スパイス系など多彩なフレーバーティーが世界中で楽しまれています。日本でも英国ブランドを中心に需要が拡大中。

🍋 アールグレイとは何か — 深掘り解説

アールグレイは特定の茶葉の品種名ではなく、ベルガモット(Citrus bergamia)の香りをつけたフレーバーティーの名称です。 ベルガモットはイタリア・カラブリア州原産の柑橘類で、レモンとオレンジの中間のような爽やかな香りが特徴です。

ベースとなる茶葉はブランドによって異なり、セイロン(スリランカ)、ダージリン(インド)、アッサム(インド)、 中国茶など様々です。そのため、同じ「アールグレイ」でもブランドによって味わいが大きく異なります。

🍊
ベルガモットとは
イタリア・カラブリア州原産の柑橘類。果皮から精油を抽出してアールグレイの香りに使用。
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香りの付け方
天然のベルガモットオイルを茶葉に噴霧する方法と、合成ベルガモット香料を使用する方法がある。
🌸
バリエーション
ダージリンベース、矢車菊入り(レディグレイ)、緑茶ベース(グリーンアールグレイ)など多数。

史実メモ:グレイ伯爵の逸話は広く知られていますが、近年の歴史研究では後世の創作である可能性が高いとされています。 史実として確認できるのは、1820年代のイギリスでベルガモットオイルを紅茶に加える手法が存在したこと、 そして1880年代頃に「アールグレイ」という商品名が定着したことです。 美しい逸話の裏に、こうした歴史的背景があることも、紅茶の奥深さの一つです。

— 参考:サラトナ「アールグレイ紅茶の本当の起源とは?」(saratna.com/earlgrey/)

🌺 センティッド・ティーとフレーバード・ティーの違い

項目🌸 センティッド・ティー🧪 フレーバード・ティー
香りの付け方天然素材と茶葉を一緒に保管し自然吸収香料(天然・合成)を茶葉に噴霧・添加
代表例ジャスミン茶、ローズティー(花びら入り)アールグレイ、ストロベリーティー
歴史宋代(960年頃)から続く伝統的製法1960年代以降に普及した現代的製法
原産地主に中国・台湾主にヨーロッパ・スリランカ
香りの特性自然で繊細、時間とともに変化する均一で安定、長期間持続する
CHAPTER 03

フレーバーティーを美味しく楽しむ方法

フレーバーティーの魅力を最大限に引き出すには、正しい淹れ方と保存方法が重要です。 香りの成分は繊細で、温度・時間・水質によって大きく変わります。 専門家が教える5つのステップと、4つのアレンジレシピをご紹介します。

☕ 基本の淹れ方 — 5ステップ

1
新鮮な水を使う
水道水は一度沸騰させてから使用。ミネラルウォーターを使う場合は軟水(硬度100mg/L以下)が紅茶に適しています。一度沸騰させた水の再沸騰は避けましょう。酸素が失われ、茶葉のジャンピングが起きにくくなります。
2
ティーポットを温める
ポットに熱湯を注いで30秒ほど温めてから捨てます。ポットが冷えていると、お湯の温度が急激に下がり、香り成分の抽出が不十分になります。
3
茶葉の量を正確に計る
ティースプーン1杯(約2〜3g)に対して、お湯180〜200mlが基本。フレーバーティーは香りが主役なので、茶葉を多めにすると香りが強く出ます。
4
95℃以上の熱湯で蒸らす
フレーバーティーの香り成分は高温で最もよく抽出されます。沸騰したてのお湯(95〜100℃)を注ぎ、必ずポットに蓋をして蒸らします。蓋をすることで揮発性の高い香りもしっかり紅茶に移ります。
5
蒸らし時間を守る
フレーバーティーの蒸らし時間は2〜3分が目安。長すぎると渋みが出て香りが飛びます。短すぎると香りが十分に抽出されません。茶葉の種類によって調整してください。

保存の重要ポイント:フレーバーティーの香りは光・熱・湿気・他の匂いに非常に敏感です。 密閉容器(缶・ガラス瓶)に入れ、直射日光を避けた涼しい場所で保管してください。 冷蔵庫での保管は、取り出した際の結露で茶葉が湿気を吸うため推奨しません。 開封後は3〜6ヶ月以内に飲み切ることをお勧めします。

🎨 4つのアレンジレシピ

🧊
アイスティー(急冷法)
通常の倍の濃さで熱湯で淹れた紅茶を、氷をたっぷり入れたグラスに一気に注ぐ「急冷法(オン・ザ・ロック)」。香りが引き締まり爽やかな味わいに。フルーツ系・フローラル系のフレーバーティーが特においしい。砂糖は熱いうちに溶かしておくこと。
🥛
ミルクティー
アールグレイやダージリンベースのフレーバーティーはミルクとの相性が抜群。ベルガモットの柑橘香がミルクの甘みと絶妙にマッチします。ミルクは温めてから加えるか、ポットに先に入れる「ミルクファースト」で。砂糖はブラウンシュガーがおすすめ。
🫧
ティーソーダ
濃いめに淹れて冷ましたフレーバーティーを、炭酸水で割るだけ。フルーツ系(ピーチ・ストロベリー・レモン)のフレーバーティーが特においしい。シロップやフレッシュフルーツを加えてカフェ風に。ノンアルコールカクテルとしても楽しめます。
🍰
フードペアリング
アールグレイ:レモンケーキ、スコーン、チョコレート。ローズティー:マカロン、クリームチーズサンド。フルーツティー:フルーツタルト、パンナコッタ。スパイスティー:シナモンロール、ジンジャークッキー。香りの共鳴を楽しんで。

🎯 フレーバーの種類と選び方

🍓フルーツ系

例:ストロベリー、ピーチ、マンゴー、レモン、ラズベリー

おすすめシーン:爽やかに楽しみたい時、アイスティーに最適

🌹フローラル系

例:ローズ、ジャスミン、ラベンダー、エルダーフラワー

おすすめシーン:リラックスしたい時、アフタヌーンティーに最適

🌶️スパイス系

例:シナモン、カルダモン、ジンジャー、チャイブレンド

おすすめシーン:体を温めたい時、ミルクティーに最適

🍋クラシック系

例:アールグレイ(ベルガモット)、レモン、オレンジ

おすすめシーン:定番を楽しみたい時、どんな場面にも

CHAPTER 04

ASHBYS OF LONDON × サラトナ

150年以上の歴史を持つ英国の紅茶ブランドと、スリランカ・インドから直輸入する日本の専門商社が手を携え、 本物の紅茶文化を日本にお届けしています。

ASHBYS OF LONDON — 英国伝統の紅茶ブランド
🇬🇧
ASHBYS OF LONDON
アシュビィズ・オブ・ロンドン

1890年代にロンドンで創業した英国の伝統的紅茶ブランド。 英国王室御用達の格式を持ち、厳選されたシングルオリジン茶葉と 独自のブレンド技術で、世界中の紅茶愛好家に愛されています。 日本では株式会社サラトナが正規輸入代理店として販売。

代表的なフレーバーティーラインナップ
アールグレーダージリンアールグレーアールグレーブルーミセスグレーイングリッシュローズストロベリーピーチマンゴーレモンラズベリーブルーベリーアップルチェリーブラックカラントオレンジジャスミンラベンダーカモミールミントシナモンチャイバニラ
🌿
サラトナ(Saratna inc.)
スリランカ・インド直輸入の紅茶専門商社

スリランカ(セイロン)とインドから直接茶葉を輸入し、独自のブレンドと着香加工を行う紅茶専門商社。 産地直送の新鮮な茶葉を使用したオリジナルフレーバーティーは、 卸・小売・オンラインショップで展開。紅茶の専門知識と食品加工の技術を活かした 高品質な製品を提供しています。

サラトナオリジナルの特徴
  • スリランカ・インドからの直輸入で新鮮な茶葉を確保
  • 独自のブレンド技術による個性的な風味
  • 着香加工による豊かなフレーバーティー
  • 卸・小売・オンライン販売に対応
  • 紅茶専門家による品質管理
🍵

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FAQ

よくある質問

フレーバーティーと香料に関して、お客様からよくいただく質問にお答えします。

📚 参考文献・出典

  1. 森のくま. (2025). 紅茶と科学 (12) 紅茶と香料(2). note. https://note.com/morinokuma0215/n/n580509111f6a
  2. 株式会社サラトナ. (2025). アールグレイ紅茶の本当の起源とは?. https://saratna.com/earlgrey/
  3. ロンドンティールーム. (2015). 「フレーバード・ティー」と「センティッド・ティー」について. https://london-tearoom.co.jp/blog/flavored-tea_scented-tea/
  4. 株式会社いいにおい. (2022). 天然香料が一番良いはウソ?【天然香料 VS 合成香料】. https://11201.co.jp/synthetic_perfume/
  5. 厚生労働省. 食品添加物. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html
  6. 消費者庁. 食品添加物. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/food_additives/
  7. ASHBYS OF LONDON. 伝統の英国紅茶ブランド. https://ashbysoflondon.com
  8. 株式会社サラトナ. サラトナ直輸入紅茶. https://saratna.com